白い肌

遥か昔から
日本では女性の美しい条件の一つとして
皮膚の色が白いことがいわれてきた
いや、日本だけではない
人種的にもともと皮膚が白いと思われる白人社会においても
皮膚の色のより白いことが美しい条件として求められ
かつ、赤や茶や黒の髪より、より色素の抜けた金髪が重宝されている

白人の場合、子供のときに金髪である人はわりと多い
しかし、その大半は大人になるに連れ
髪の色素が濃くなり、茶などに変化してしまうらしく
実際、白人においても色白でしかもブロンドという成人はけっこう少ない
ゆえに、現在見ることのできるほとんどのブロンドは
日本人がするそれと同じように
薬品などによる脱色によって作られたものである

また、それと同じくして
皮膚が有色・白色であるにもかかわらず
世界の多くの国に皮膚につける
白粉のたぐいの化粧品は存在しており
皮膚の色の白いことを美しいとすることは
世界普遍の価値観であると思われる

何故、人々は白い皮膚を求めるのか

ところで、人間の皮膚の色を決定している大きな要素は
メラニンという物質の多さである
人の皮膚はメラニンが多いほど色が黒くなり
メラニンが少ないほど白くなる

このメラニンが我々の社会に於いて
どういった扱いを受けているか考えて見ると
しみの発生を防ぐためにメラニンの発生を抑制するなどをうたい文句に
化粧品会社はメラニンをまるで有害物質のように言い
美白という言葉を用い、メラニンのない白い皮膚を奨励する
そして人々は競ってメラニンのない肌を目指そうとする
そんな風潮が蔓延している

しかし、本来のメラニンの働きというものを考えてみると
そういった行動は
きちんとメラニンができる体質の人の皮膚に対して
まったくの逆効果を与えているといえよう
メラニンは日焼け止めや他の人工的な紫外線を防御するものたちが及ばぬすばらしい力で
紫外線を跳ね返し、細胞が破壊されるのを防ぐものなのである

そう、メラニンこそが人間が自然に保有している
紫外線から人体を守る最強の防御壁なのであり
そして、メラニンが間に合わず破壊された細胞が暴走しメラニンを作りつづけ
その結果できるのがしみである

つまり、メラニンができるからしみができるのではなく
メラニンができないから細胞が破壊されしみができるのである

従って、メラニンを多く持つ、または多く作れる人間は紫外線に強く
しみもできにくく、皮膚癌にもなりにくい
また、紫外線によって皮膚が徐々に破壊され老化していくことを光老化というが
当然その速度もメラニンの多さで変わってくる
白人と黒人を比べれば
明らかに白人の方が早い年齢でしわ、しみができるのは
そのせいなのである

しかし、生物学的にはメラニンの多い
皮膚の黒い人間の方が優れているというのに
皮膚の黒い人間の方が末永く肌がきれいなのに
何故、人々は白い肌を求めるのであろうか
明らかに種の保存の法則からは掛け離れた感覚である

逆に
生物学的に劣性であるということは
稀少であるということであり
そういった稀少さに価値を求めた結果だとも言えるかもしれない

確かに
日本で白蛇や白鹿などは神さまの使いといわれ崇められるように
タイでは白い象、インドでは白い牛、アフリカでは白いライオン
世界中どこへ行っても白子の動物は神格化され崇められる傾向がある
そういった白という色が持つ神秘的な崇高さ、穢れなさにあこがれ
それを求めるのであろうか

それとも
白または黒という色のもつ意味
つまり
白という色は何も足されていない色
全ての始まり、汚れなさなどを意味し
黒は全ての色を足していった結果最後にできる色
全ての終わりを意味する
これは婚礼衣装の白、喪服の黒などを考えれば
世界共通な感性であると言える
そういった色の意味のもつ価値に裏付けられた価値なのであろうか

モドル